スイカを買うために、少し遠いスーパーへ向かう。夏になると、無性にスイカが食べたくなる。というより、塩を振って、がぶりつきたくなる。歩きながら、ふと思う。スイカは野菜か、果物か。答えをGPTに聞いてみた。「植物学的には野菜、食文化的には果物です」。曖昧なところが、いかにも現代的だ。スイカはウリ科で、畑で育つ。それが野菜の条件らしい。でも「甘いものは果物でいいじゃないか」と思う。
スイカ割りという儀式は、日本だけのものだろうか。目隠しをされ、ぐるぐる回って、声を頼りに棒を振る。あれを奇妙に感じる視線は変だろうか。そもそも、スイカから見れば、災難だ。子どものころ、ぐちゃぐちゃになったスイカを見て、なんか違うと思った。やっぱりスイカは、断面だ。真っ赤な果肉に黒い種。無意味に美しい地図みたいな、不揃いな並びを見てから、がぶりつくのがいい。
今年もスイカを切った。赤に塩をひとふり、がぶり。種をピッと吹き出す。この一連の手順が、夏を刻んでいく。