『落下の王国』を観終えて、しばらく立ち上がれなかった。人が複数の世界を同時に生きているということを、自分はいつ知ったのだろう。思い返せば、小学生の頃に観た『ネバーエンディング・ストーリー』かもしれない。
物語の世界に深くのめり込みながら、同時にその外側の現実から物語を眺めてもいる。そのめくるめく並行世界を生きる、めまいのような快感。物語が生きることを支えているという実感。
でも『落下の王国』は、物語が呪いにもなり得ることを知っている。語りは人を生かす。同時に、人を閉じ込めもする。この映画が静かにすごいのは、それでも物語を手放さないところだと思う。希望として強く言い切らない。救済としてきれいに回収しない。
ただ、他者と共有された瞬間に、物語がほんの少しだけ開く。語り直しの可能性が、かすかに残り続ける。もう一度、観たい。