左足が右より大きいと知ったのは、中1の春だった。サッカー部に入り、シューズを買いに行ったお店で足のサイズを測ったとき、「左足が0.6センチ大きい」と告げられる。好みのシューズは、右足だとぴったり、左足に入れると少しきつい。店のおじさんの「履いていれば伸びる」という説明を鵜呑みにして買ったのだけど、一向に伸びない。左のつま先がきついという違和感から、次第に親指を折り込むように履いていた。
当然、走り方が変になる。なんとかせねばと思い悩んだ末に、金槌で親指部分を叩きはじめた。皮は叩くうちに伸びるというあやふやな理屈。半月かそこらで、シューズの親指部分にぽっかりと穴が空き、やむなくテープで補修して使い続けた。
当時サッカーのスーパースターと言えば、マラドーナだった。左足一本で魔法のようにボールを操る。サッカー部の誰かから、メキシコワールドカップのイングランド戦を録画したVHSを手に入れた。伝説の5人抜き。左足のつま先でボールを柔らかくタッチする、そのリズムの強弱を何度も見ては、動きを真似ようとした。マラドーナは、左足しか使わない。その影響で、無傷の右のシューズではなく、穴の空いた左のシューズでボールをタッチし続けていた。
テープ越しに伝わる左の親指とボールがリズミカルにふれる感覚を、今もふと思いだす。