紙袋が捨てられない。あれはいったい何なのだろう。そもそも「ものをしまうための袋」なのに、袋のほうがしまわれる側に回ってしまっている。棚の中で、さらに別の紙袋の中に入れられて、静かに眠っている。そして、ほとんどの場合、一度も使われない。
何かのついでに棚を開けると、そこに紙袋がある。「あ、これはちょっと小さいな」「これは持ち手が細すぎて痛そうだな」などと、もっともらしいことを言いながら一通りチェックして、結局またしまう。
大きい袋の中には中くらいの袋が入り、中くらいの袋の中には小さい袋が入っている。マトリョーシカみたいな構造だ。一番小さいところから出てくるのもやっぱり紙袋で、特にサプライズはない。勢いで全部取り出して並べてみても、「おお、いっぱいあるな」と思うだけで、具体的な使い道はやっぱり見つからない。ひと通り眺めたあと、結局また同じ順番で戻すか、面倒になって適当にまとめて突っ込む。
ここまで来ると、紙袋はもはや実用品というより、「取ってあるという状態」そのものとして存在している気がする。何かを入れるためにあるのではなく、「いつか何かを入れるかもしれない自分」という可能性だけを保管しているのだ。棚の一段をまるごと使って、可能性だけがたたんで積み重ねられている。