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User Story

デザイン事務所の「整然と雑然」ーー 仕切り、ときどき作業台(テスト)

アイデアは、整いすぎた場所からは生まれない。かといって、モノが溢れるだけでは思考は定まらない。アートディレクター山野英之さんの事務所は、まさにその中間にあるバランスを体現していました。ユーザーケース2回目は、多忙なクリエイターの「整え方」を紐解きます。

あえて『ノイズ』を置くんですよ。

きれいに整えすぎると、思考もそこで止まってしまう気がして。
例えば、このデスクを仕切っているシェルフ。
一番上の段は『今、気になっているモノを置く場所』という暗黙のルールにしています。昨日まで分厚い資料集が積んであったのに、今朝出社したら、誰かが旅先で買ってきたらしいオブジェがぽつんと置いてある。

一見、今の仕事とは無関係な『視覚的なノイズ』がふと目に入る。その瞬間に、煮詰まっていたアイデアがふっと動くことがあるんです。」

ただ、下の段は『聖域』なんです。 ここは僕のデスクの延長だから、絶対に他人には触らせない(笑)。

今集中しているプロジェクトの資料や、制作途中の精密なモックアップ。それら思考の核となるものが、すべて手の届くこの段に収めています。ここは思考を邪魔されたくない『整然』とした領域。

シェルフ一枚を隔てて、上段はチームの『雑然としたノイズ』を受け入れる場所、下段は個人の『整然とした集中』を守る場所。この一台が、僕の中のオンとオフではないですが、意識を明確に切り替えるスイッチになってくれているんです。

アイデアを生む『間』

昼食は身体を動かすために外で摂ることが多いという。時間はまちまち。「お腹が空いたとき」が頃合いだ。

「隣の隣の町ぐらいまでは自転車で行きますね。電動アシスト自転車は本当にありがたい。偽りの若さを金で買ってる感じだけど、なかったらまともに生活できないですよ。ランチタイムは混むから、早ランチにするか、1時以降の遅いランチにするか。並ぶとか待つとかは避けたい(笑)」

ランチから戻ってくると、メールの返信や事務的な作業を続ける。翻訳に時間を当てられる場合は、午前中から引き続き訳文を読むか、ゲラ(レイアウトに流し込んだ校正刷り)に赤字を入れて推敲していく。

「昼間に自分の翻訳を進めるとしたら、ゲラ読み。比較的頭が冴えている時間帯にできるといちばん良いですね」

ゲラへの赤入れ(推敲作業)は、短いものだとタブレット上で進めることも増えた。

「結局、デザイン事務所って『整然』だけじゃダメだし、『雑然』だけでも成り立たない。個人の研ぎ澄まされた集中と、チームの予期せぬアイデアの衝突。その両方が同じ場所で、同時に起こらないといけないんです。

その点で、このシェルフは完璧な『間仕切り』であり、同時に『境界線』なんですよね。 完全に視線を遮る『壁』だったら、こうはいかない。壁は、分断を生んでしまうから。

このシェルフは、向こう側の気配を感じさせつつ、目の前の作業には集中させてくれる。 何よりいいのは、棚自体がすごくシンプルで、主張しないこと。だから、僕個人の『聖域』としての整然さも、チームの『カオス』としての雑然さも、どちらも静かに受け止めてくれるんです。

空間を仕切るというのは、関係性をチューニングすることでもある。 そういう意味で、これは家具というより、僕らのコンディションを整える『道具』に近いのかもしれませんね。隔てながらも繋いでくれる、この絶妙な距離感が、アイデアを生む『間(ま)』になっているんだと思います。」

商品詳細

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